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最高裁判所第一小法廷 昭和53年(オ)647号 判決 1979年4月19日

上告人

中村杢二

被上告人

静岡県

右代表者知事

山本敬三郎

右訴訟代理人

御宿和男

同指定代理人

鈴木不二夫

外五名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(本山亨 団藤重光 藤崎萬里 戸田弘 中村治朗)

上告人の上告理由

一、控訴判決は民法一四一条及び年令計算に関する法律第二条、民法一四三条の二項に違背している。

二、本件の概要

訴外静岡県教育委員会は昭和四六年度末(昭和四七年三月三一日)人事異動の際、明治四五年四月一日生の上告人を、昭和四七年三月三一日に、満六〇才として取扱い、当該年度末に退職勧奨に応じねば、以後優遇措置を行はないと通達した。がこの年令計算には誤りがある。出生后六〇ケ年の期間の満了する昭和四七年三月三十一日の終了で五九才が終り六〇才となる。日を単位とすれば昭和四七年三月三一日は五九才の末日で、昭和四七年四月一日に六〇才となるから、退職せず、翌四七年度(昭和四八年三月三十一日)末退職した。

通常の退職金は受けたが、優遇退職金を受けていない為、通常退職金との差額請求の為め、本件訴訟に及んだ事は控訴判決摘示の通りである。

控訴審第一回の口頭弁論は「事実問題に争はなく、争点は年令計算のみである」として直に、結審し、判決は出生日地前日に満六〇才になるとし、上告人の出生日に何才になるとの主張を斥けた。

三、控訴判決法律違背の理由

(一) 控訴判決は民法一四一条に違背する。

判決は年令計算に付(三枚目九行目以降)「明治四五年四月一日生れの者が満六〇才に達するのは、右の出生日を起算日とし、六〇年目のこれに応当する日の前日の終了時点である昭和四七年三月三一日午后一二時であるところ、(年令計算に関する法律・民法一四三条第二項)……(以上を前半と呼び、以下を后半と呼ぶ……)、日を単位とする計算の場合には、右単位の始点から終了点までを一日と数えるべきであるから、右終了時点を含む、昭和四七年三月三一日が右の者の満六〇才に達する日と解することが出来る」と判示した。

判決前半が、「明治四五年四月一日生れの者が満六〇才に達するのは昭和四七年三月三一日の終了時点午后一二時である」としたのは民法一四一条「前条ノ場合ニ於テハ期間ハ末日ノ終了ヲ以テ期間ノ満了トス」を正しく適用している。

判決前半より、三月三一日午后一二時迄は満六〇才に達しないから五九才である事が明らかであるにも拘はらず、年令は日を単位として計算する事を理由とし、二四時間遡り、三月三一日の始点より六〇才とした事は判決前半の論旨に反し、「期間ノ末日終了前ニ出生后六〇ケ年ノ期間満了」とするもので民法一四一条違背であると思う。

上告人は判決後半は次の如く、すべきものと思う。

「日を単位とする計算の場合には、右単位の始点から終了点までを一日と数える可きであるから、右終了時点三月三一日午后一二時と同一時刻四月一日午前〇時より午后一二時迄に六〇才となる」(傍点部分上告人の主張)

又判決后半の日を単位とする計算方法は誤りがある。次に之を述べる。

(二) 日を単位とする計算方法について

控訴判決は

一、三月三一日午后一二時に満六〇才に達する。

二、一日の始点より終点までを一日と数える。

三、午后一二時は三月三一日に含まれる。

四、従つて三月三一日始点より六〇才になる

と判断した。

控訴判決に対する反論

一、前項に述べた通り、

二、年令は暦による期間計算であるから、日を単位とするは正しい。

三、三月三一日午后一一時五九分の次は午后一二時であるが、四月一日午前〇時と同時刻で、両日の共有時刻であり、又両日の境界線である。(甲第四号証、小学校算数四年下教科書)この境界線の前は五九才で境界線の後は六〇才である。

四、控訴判決は午后一二時を三月三一日にのみ含まれるとし、三月三一日午后一二時に六〇才に達するから三月三一日始点から六〇才と断定した事は誤りである。

(三) 結論

昭和四七年三月三一日終了点で満六〇才に達するから終了点に達する五九才で、終了点に達した後は六〇才である。

日を単位とすれば三月三一日は五九才の末日で、四月一日は六〇才の初日である。

控訴判決は五九才の末日である三月三一日を六〇才の初日と誤解している。

以上の通り控訴判決は、民法一四一条及び関連して、年令計算に関する法律第二条、民法一四三条二項に違背している。

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